読書のジャンルを変える


 感情の老化防止で手軽なのは、読書だ。ただし、本はけっこう読んでいるという読書家でも要注意。大切なのは、量ではなく内容なのだ。慣れ親しんだ作家の作品や、それに似ている本ばかり読んでいては、感情老化の予防にはならない。あえて、これまで手に取らなかったような本を、次は意識的に読んでみてほしい。

「感情老化を防ぐには、今まで触れたことがないジャンルの本を読むことが有効。例えば、歴史小説の池波正太郎が好きという人は、現代作家の林真理子作品を読む。ビジネス小説作品が多い池井戸潤を愛読しているなら、宮沢賢治の童話作品を読んでみるのです。それが脳を活性化させるのです」

▼右の人は左、左の人は右の新聞や雑誌を読む
 いつも読んでいる新聞とは、違う論調のものを読むことも有効だ。保守的な政治思考を持つなら、リベラルな新聞を読み、自分と異なる意見に触れる。または、その逆だ。

「人間は、反対の意見に嫌悪感を覚えますが、それこそが大切。あえてその意見と向き合い、論理的に批判を考えたり、“反対意見にも一理ある”などと一部を受け入れたりすることが、感情を若返らせる要素になります。これはテレビ番組、映画などにも言えます」

 今、日本ではみなが右向け右で、ニュースでも、コメンテーターはみな同じことを言う傾向が強い。

「皆が同じ意見を述べる日本は、感情老化を促進する社会です。多くの人が、前例踏襲型の仕組みの中で、あまり考えず、人の意見に乗っかって、楽して生きようとしています。だからこそ、自分の意見を考えるのです。誰かのファンになったら信者になって、批判を許さないという最近の風潮も気になります。これでは老化一直線ですよ」

 ちなみに、異なる意見に触れることは、40代以降に多い、うつや自殺の予防にもつながるという。精神的に追い込まれる人の多くは「これしか正解がない」と思い込んでいる。しかし、複数の意見に触れ、物事にはさまざまな見方と選択肢があるとわかると、自分を追い込まなくてすむ。

▼年をとったら肉や魚を
 精進料理のような食事が健康的だという誤解があるが、肉を食べることは感情の老化防止に大事だという。

「循環器系の医師の中には、コレステロール=悪として、肉を食べる量を控えるように助言する人が少なくありません。しかし、日本人は1日に80グラムしか肉を食べていないのです。これは欧米に比べ150グラム近く少ない。肉のアミノ酸とコレステロールは男性ホルモンを作る原材料になります。40代以降は、バランスがいい食生活の基本の上で、肉を食べるようにしましょう」

 さらに、コレステロールには脳に幸せホルモンのセロトニンを運ぶ働きがあるとされている。また、セロトニンの原料となるトリプトファンも肉には多く含まれている。

 肉や魚に含まれるタンパク質にも注目。心の働きに大切な神経伝達物質を増やすには、主原料となるタンパク質を十分にとることが欠かせないからだ。

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