野口学部長は学生の成長ぶりに手応えを感じている。

「解剖の見学前はにぎやかにしていた学生が、見学後に神妙な面持ちで大学をあとにする。命の厳粛さを心に刻む機会になっている。人体の構造をより深く理解することは、治療法や予防法を考えるうえで必ず役に立つことになります」

 研究に力を入れており、設備も整っている。質量分析機や超解像顕微鏡など、他の大学では導入が少ない機器もある。億を超える高額な機器も珍しくない。

 実験演習も多く、研究に関心の強い学生は、1年次から研究室で指導を受けることができる。4年次には研究室に所属し、卒業論文を執筆する。研究テーマは、アルツハイマー病やがん発症の仕組み、アンチエイジングなど、病気の解明や予防法、健康増進にかかわるものが多い。

 企業からの評価も悪くなく、就職先は医薬品会社や、食品、化粧品などを取り扱う企業で、開発職や営業職として活躍する。武田薬品工業や森永乳業、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった大手にも相応に就職している。

 医学に貢献できるのは、医者だけではない。創設者の想念は現代の若者らに受け継がれ、あちこちで実を結ぼうとしている。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2019年5月17日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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