高齢者のうつ病は認知症と間違われやすい。記憶力・判断力・理解力の低下など認知症のような症状があるうつ病、意欲や興味、関心の低下などうつ病のような症状がある認知症が存在するためだ。

 物忘れや活動性が落ちることにうつ病の人は過敏に反応するが、認知症の人はそのことを気にしていないといった違いがあり、診断の際に見極めるポイントとなる。しかし、合併しているケースやうつ病から認知症に移行するケースも少なくない。

「以前はどちらの病気かを見極めることが重視されていましたが、区別しにくい例もあり、どちらの可能性も考えて治療していくこともあります」(同)

 うつ病は治療によって改善することの多い病気だ。

「ほとんど毎日、一日中抑うつ気分が続く」「何事にも興味や喜びを感じない」「意欲や集中力がない」「食欲がない」「眠れない」などの症状があれば、近くの精神科や心療内科を受診して、治療を受けたい。治療がうまくいかない場合などは、高齢者の精神・神経の病気を専門的に診る医師がいる病院を受診するのも一つの方法だ。日本老年精神医学会のホームページで検索することができる。

 高齢者のうつは、受診率が低いと言われている。精神的な病気である自覚に乏しく、うつ病であることを否認する傾向があるためだ。精神科の受診に抵抗がある本人をどのように受診させればいいのか。前述の馬場医師はこう話す。

「『眠れていないのだから、それを治してもらおう』というように本人が自覚している『眠れない』『食欲がない』といった身体的な症状に焦点を当てて、受診を促すのがおすすめです」

 まずはかかりつけの病院で検査を受け、身体的な病気がないことを確認したうえで、精神科などを紹介してもらうと、抵抗がある人でも受診しやすい。(ライター・中寺暁子)

週刊朝日  2019年5月17日号