雅子さまは63年生まれで、ズバリその世代に属する。受験就職と目標を作り、見事にクリアしてきた雅子さまにとって、皇室はその循環がうまくできない世界だった。

 だが代替わりの日にちが5月1日と決まった時点で目標が定まり、雅子さまは努力の工程表を作り、クリアしていった。昔取った杵柄だから、最近の雅子さまの目には力が感じられると香山さん。

 この世代の背景として香山さんは「共通1次試験」があると考えている。

 79年から89年まで11年間、国公立大学受験のために実施された共通1次を香山さんは、「性別も住んでいる場所も関係ない、超平等のシンボル」と見ている。自身も60年生まれで、第1回の受験生でもあった。

 昨年、医学部入試で続々と「女子差別」が明らかになった。受験も所詮、男女平等ではない。だが、当時は努力して結果を出せば、男女平等だと信じられたし、合否を分けるのは点数だから、合理的な世界だと思えた。だから「共通1次世代」は頑張ることが好きだ。そう香山さんは言う。

 アメリカの高校からハーバード大学に進んだ雅子さまは、共通1次試験は受けていない。だが人並み以上に努力をして、結果を出してきた方だから、皇室でも実力を正当に評価されたかったはずだ。ところが期待された出産は努力だけではどうにもならず、山のように待ち構える宮中祭祀は合理的説明から余りにも遠い。

 香山さんは雅子さまを「努力でどうにもならないことには、どうして立ち向かえばいいかわからないタイプ」と分析している。皇室で苦しまれるのは、当然のことだったかもしれない。

 実は私も香山さんと同学年。共通1次の1回目を受けた。だから「男女平等」を信じたという香山さんの解説はよくわかる。

 そんな私だが、皇太子さま(当時)の「人格否定発言」を聞いた時、とても驚いた。雅子さまは03年12月から公務を休まれた。結婚から10年経っていた。

「雅子にはこの10年、自分を一生懸命、皇室の環境に適応させようと思いつつ努力してきましたが、私が見るところ、そのことで疲れ切ってしまっているように見えます。それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」

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