――タレントとして俳優として、また評論家としても活躍していた板東だが、6年ほど前、個人事務所の申告漏れが報じられた。

 たしかに、名古屋国税局が税務調査に来て、修正申告に応じました。そこで、ぼくの中では終わった話でしたけどね。こちらにも言い分はありますし、見解の相違があったんです。

 ただ、騒ぎになってしまい、仕事はなくなりました。「早く説明したほうがいい」と言ってくれる人もいたけど、世間のバッシングが盛り上がっているときには、何を言っても聞いてもらえないでしょう。会見を開くまで10カ月ぐらい、ひたすら沈黙を守りました。

 その間は、家からほとんど外に出られない生活です。つらいと言えばつらかったけど、そのときも「野球のときの理不尽さに比べたら」と思えば、どうということはなかったんです。

 ありがたいことに、また少しずつ仕事させてもらっています。あのときに辛抱したから、今日のこの日を迎えることができたと思っています。

 ぼくは、自分で自分をほめるのが得意なんです。「お前はたいしたもんや」「お前のような男はおらん」と、いつも自分にお世辞を言いながら、奮い立たせてきました。

 これからも、自分をほめる元気があるうちはがんばりますよ。誰もほめてくれませんから、自分でほめるしかないんです(笑)。まあ、よかったらやってみてください。けっこう、パワーがみなぎってきますから。

 こんなふうに、しぶとくものを考えられるようになったのも、思えば、野球でさんざん理不尽な目に遭ってきたおかげかもしれません。嫌々やっていた野球も、けっこう役に立ってくれていますね。

(聞き手/石原壮一郎)

週刊朝日  2019年5月3日号‐10日合併号