「内容について何も聞かされないうちから、一も二もなく飛びつきました(笑)。そうしたら、映画俳優でコメディアンのスティーヴ・マーティンが脚本を手がけたこと、1904年、20世紀の幕開けに、もしパリでピカソとアインシュタインが出会っていたら……という設定がわかって、さらに面白そうだな、と。ただ、最初に台本を読んだときは、会話の中に出てくる言葉のほとんどが理解できなくて(苦笑)。ピカソがどんな人学ぶために、バルセロナとパリへ行きました。物語の舞台になるバー“ラパン・アジール”へ行って、僕なりにその時代の空気を想像したりして……。日本に戻ってから、稽古が始まって、実際に今回の演出を担当するランダル・アーニーさんとお話ししたら、『なるほど!』って、いろんな言葉が腑に落ちた。セリフにちりばめられた仕掛けの意味がわかって、俄然、台本が面白く感じられるようになったんです」

 最初に作品に入るときは、舞台のみならず映像でも、わからないことだらけ。経験を積んで、知識や技術も増えていくけれど、新しい役は毎回ゼロからのスタートだという。

「僕自身は30代に突入したばかりですが、さらにステップアップしていくために、この作品との出会いは、すごく大事になる気がしています。将来の目標? 人として面白くいたいですね。俳優の先輩方は、みなさん『何が起こるかわからないから、人生面白いんじゃん』っておっしゃるので(笑)。僕も、何が起こっても適応できる人間、どんな役が来ても演じられる俳優でありたいです」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号