財政赤字の極大化も、経済の低迷で起きているともいえる。19年度の税収予想は約62兆円で史上最高。今までの最高はバブルの末期、90年度(決算ベース)の60.1兆円だった。

 問題は90年度の歳出は69.3兆円だったのに19年度の歳出は101兆円ということ。税収はほぼ同じなのに歳出は46%も伸びている。これでは、国の借金である国債の残高が1千兆円を超えるのも無理はない。

 名目GDPが増えないから税収が伸びない。しかし歳出はうなぎのぼり。その差を消費増税でまかなおうとする。これでは国民が怒るのはあたりまえだ。

 名目GDPと税収はほぼ比例する。名目GDPが2倍になるということは、国全体が2倍豊かになり、税収も2倍になるのが普通だ。名目GDPが増えないのに税収を無理に増やそうとして、国がお金を持っていってしまうから国民は怒るのだ。

 あるべき姿は名目GDPを2倍にし、国民の所得を増やす「所得倍増計画」だ。そうすれば歳出が2倍になっても、財政問題は生じることもなかった。この20年でGDPを2倍にすることを他国は達成しており、日本も不可能ではなかった。

 要は、何がこの低迷の原因か?を突き詰め、それを直せば国民も豊かになり、財政もここまで悪化しなかったのだ。それが政治家のもっとも重要な仕事だ。平成の失敗を「令和」で繰り返してはならない。

 私自身はこう思っている。根本原因は、日本が計画経済国家で社会主義的運営がなされていたこと。そして、それ故にかもしれないが、円が国の実力に比べ強すぎたせいなのだ。

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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