まずは糖尿病です。重度の歯周病は血糖値のコントロールを阻害して、糖尿病を引き起こす恐れがあるのです。歯周病による炎症性物質が、インスリンの働きを抑制すると考えられています。

 そのほか、歯周病は誤嚥性肺炎、細菌性心内膜炎、バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)、胃潰瘍などを引き起こす要因になると見られています。

 さらに、歯周病によって歯が抜けたり、炎症の痛みによって噛み合わせの左右の対称性が崩れたりすることが問題です。

 左右いずれか一方だけで噛んでいると、そちら側の咀嚼(そしゃく)筋と胸鎖乳突筋が疲労し、肩こりや片頭痛の原因になるのです。

 また噛み合わせの悪さから強い力で噛むようになると、頸椎(けいつい)が圧縮されて、脳に入る血管が圧迫されたりねじれたりすることがあります。それにより脳に供給される血液量が減少して、脳軟化症や認知症を引き起こす恐れがあるというのです。

 つまり、口の中という小宇宙の乱れが、大宇宙(体全体)の乱れをもたらし、それは脳にも影響を及ぼすということなのです。

 実は私は70歳ぐらいまでは歯が丈夫だったので、口の中のケアに無頓着でした。でも福岡さんの本を読んで、しっかり歯磨きをしなければいけないと思っています。

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら