年金に詳しい社会保険労務士の北村庄吾氏はこう呼びかける。

「国民年金の場合、65歳から満額をもらうためには加入期間が40年に達している必要があります。1991年度から20歳を過ぎたら学生でも強制加入する制度になりました。現在50歳超の人は、加入期間が40年未満である人が多い。つまり、満額をもらえない人が少なくないのです。そこで60歳以降も国民年金に任意加入すれば、1年延ばすごとに65歳以降にもらえる年金を年約2万円分増やせます」

 ほかにも、年金の受取額を増やす制度として、付加年金や国民年金基金、個人型確定拠出年金制度などがある。

 健康に自信がある人は、受給時期を繰り下げてもよい。1年繰り下げるごとに、受給額は8.4%割り増しされる。満額の場合、老齢基礎年金(国民年金)の受給額は月6万5008円で、1年繰り下げると5460円割り増しになる。

 収入が少しでも増えれば、生活を切り詰めなくてもよくなる。節約ばかり考えずに、年金を増やせる余地がないか、年金事務所などで相談しよう。

 ここまで見てきたように、節約といっても、いろんなやり方がある。ポイントを下にまとめた。

【専門家が教える節約のポイント】
・生命保険料やスマホ代など「やりにくい」ものから考える。食費や日用品の節約は後回しでOK
・不要な保険は思い切って見直す。国民健康保険など公的制度があるので医療費は心配ない
・使っていない固定電話は解約。スマホは格安スマホに変えて電話代を大きくカット
・公共交通機関がある地域ではマイカーはいらない。必要な時はカーシェアリングやレンタカーを利用
・食費などは1カ月で使う予算をまず決める。毎日の支出がその範囲を超えないようにやりくり
・冠婚葬祭や旅行、子ども・孫への援助といった特別な出費はノートに記録する習慣をつける

 けちけちした生活をしなくても、効果が大きいものだけでも実践すれば合計で年間30万円は削れる。保険の見直しで12万円、電話で14万円、電気・ガス・水道などで4万円といった計算だ。クルマを手放せばさらに36万円はカットできる。年間60万円の節約は無理な数字ではない。

 老後を積極的に過ごすためにも、節約術をさっそく試してみてほしい。(池田正史、本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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