東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
U18代表候補の紅白戦に登板した大船渡高の佐々木朗希=4月6日 (c)朝日新聞社
U18代表候補の紅白戦に登板した大船渡高の佐々木朗希=4月6日 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、大船渡高の佐々木朗希投手の才能に期待を寄せる。

【写真】U18代表候補の紅白戦に登板した佐々木朗希投手

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 大船渡高の佐々木朗希投手が、U18(18歳以下)代表候補が集まった紅白戦でとてつもない球速をたたき出した。ネット裏のスカウトのスピードガンではあるが、163キロだという。しかも、1人のガンだけではなく、複数のスカウトのガンで160キロ前後が出ていたという。信じられないというのが率直な思いだ。

 大谷翔平(現エンゼルス)が花巻東時代に160キロを出したのが高校3年生の夏である。春にその数字を超えてしまった。まだ成長過程にある高校生なら、この数カ月の差は大きい。

 それだけのポテンシャルを持つ選手だからこそ、小さくまとまらないでほしいと願う。制球力の高い投手を見て、自分も制球力を磨きたいと思うのなら、投球フォームの安定ばかり求めるのではなく、体全体を使って投げることを心がけてもらいたい。

 セットポジションから静かに足を上げて、バランスをとることよりも、ワインドアップやノーワインドアップでもっと大きく、ダイナミックな体の使い方をすることを勧めたい。その中で当然、失敗や壁に当たることもあるだろう。でも、その経験こそが、さらにスケールを大きくすることにつながるはずだ。

 強豪校の誘いもあったろうが、地元の高校に進学した佐々木投手にとって、チームメートとともに甲子園に出ることは最大の目標であろう。勝つために最短距離を求めるのであれば、それは大会直前に考えればいいのではないか。夏の岩手大会が始まるまでは、もっと大きく、もっと体を使って投げることはできないかを意識してほしい。それは、ひじや肩への負担を減らすことにもつながる。163キロを投げたことで、周囲は、どうしても球速を見てしまう。それよりも体全体のパワーをさらに拡大させ、ボールに伝えることを突き詰めていってもらいたい。

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東尾修

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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