だが、委員の中に保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のケイ・コールズ・ジェームズ所長が含まれていたことが“炎上”を引き起こした。ジェームズ氏はツイッターで、性的少数者のLGBTQや、移民に反発するような主張を繰り返していたからだ。

 従業員たちは4月1日、再び立ち上がった。ジェームズ氏を解任するよう経営陣に求める嘆願書を公開。「グーグルの『倫理性』はLGBTQや移民の幸福よりも権力におもねることを選んだ」と痛烈に批判した。数日のうちに2500人を超える従業員がこれに署名し、社外からの批判も高まった。さらに参加の辞退を表明する委員も現れたことから、グーグルは4月4日、委員会の解散を決定した。

 近年、米国の大手IT企業は、トランプ大統領や共和党議員らから「リベラル寄り」「保守を差別している」との非難を浴びている。グーグルはそうした声に配慮し、委員の「政治的多様性」を確保するために、ジェームズ氏に参加を要請したのだろう。もはやAI技術の議論は現実の政治と無関係ではいられない。委員会の解散はその事実を端的に示している。

週刊朝日  2019年4月26日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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