生前整理で使われることも増えているスマホのフリマアプリ
生前整理で使われることも増えているスマホのフリマアプリ

 長く生きれば、増えてしまうのが持ち物だ。不用品も増すばかり。その整理がもっと気軽にできないか。中高年の人々が、生前整理の終活でアプリを生かすケースが広がっている。

 ある50代の女性は近年、生死の境をさまよった。「腸内の出血性ショックになって救急車で運ばれました」と明かす。それを機に、もしも自分が急に命を落としたら残されている多くの物で家族は困惑するだろうと、思い至った。業者にぞんざいに扱われるのも嫌だ。そこで楽天のフリマアプリ「ラクマ」で、昨年から取引を始めた。その回数は130回を超える。

 アプリを使い始める前は手順が面倒だと感じていた。でも、手元には長年集め続けてきた著名アーティストにまつわるコレクションが多数残る。それらを欲しいと思う人に大事にしてほしいという気持ちが上回ったという。出品したのは、クイーンのグッズ、フィギュア、洋楽CDが中心。27年前の新聞の切り抜きも売れたという。「共通の趣味がある人が相手だと、メッセージでやりとりするのも楽しくて」

 ラクマの担当者によると、中高年がフリマアプリを利用する理由としてこんな声もある。「人と接し、仕事をしている気分になれる」「不用になった孫の洋服やおもちゃを売り、入り用の物をプレゼントできる」

 ラクマによると、60代以上のユーザーの新規登録者数は3年で約30倍、なんと70代は約50倍になった。シニア層のユーザーが増えるとともに、「終活」というワードを含む商品登録も急増。2017年と18年の比較では約9倍になったという。「メルカリ」も、60代以上の利用者が拡大、17年と18年の比較では、「生前整理」や「終活」のキーワードで出品される商品が約2.5倍に増えた。

 そもそもフリマアプリとは何だろう。スマートフォンを使い、ネット上でフリーマーケットのような個人間売買が手軽にできるサービス。ラクマ、メルカリのほか、「ヤフオク!」がよく知られている。

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