■天皇陛下のお気持ちはいかに

 本来は厳粛に行われるべき新元号決定が、とんでもない軽薄なから騒ぎになってしまったうえに、政治利用までされたとなれば、天皇陛下はどう感じておられるのか、ということにも思い至る。

 元々、天皇陛下が退位を望まれたのは、健康上の理由とともに、ご逝去に伴う皇位継承になると、突然のことで国民生活に不測の影響を与えることがあるので、それを避けたいというお気持ちが強かったと言われる。また、皇位継承に当たっては、関連の儀式が過度に華美なものとならないようにというご配慮もされていると聞く。

 そうしたご意向と比べると、全く正反対のお祭り騒ぎ。しかも、統一地方選挙への国民の関心を盛り上げなければならない大事な時に、逆に、選挙はほとんど霞んでしまった。陛下のご意向とは真逆ではないかと思ってしまう。
 
 安倍総理の令和フィーバー選挙利用は、まだまだ続いている。4月10日には、国立劇場で「天皇陛下御即位三十年奉祝感謝の集い」が開催された。ビートたけし、ユーミン松任谷由実)、山中伸弥各氏ら、芸能人、知識人が招かれたが、そこには衆参議長が並び、安倍総理が祝辞を読むのだから、政府主催の「式典」かと誰もが思っただろう。しかし、実際の主催者は、「天皇陛下御即位三十年奉祝委員会」という民間団体だ。

 その設立発起人には、櫻井よしこ氏や神社本庁総長らの名前があり、中西宏明経団連会長の他、全国農業協同組合中央会会長、日本商工会議所会頭、日本医師会会長などもいて、自民党の支持団体にも見える。ところが、連合の神津里季生会長も名前を連ねている。

 さらに驚いたのは、「天皇陛下御即位三十年奉祝委員会」と並んで主催者として名を連ねる「天皇陛下御即位三十年奉祝国会議員連盟」という団体があり、その顧問には、枝野幸男立憲民主党代表、小沢一郎自由党代表、玉木雄一郎国民民主党代表らの名前が並んでいることだ。役員にも各党から幹部が参加している。超党派の団体なのだ。ただし、共産党と社民党は参加していない。

 もちろん、民間の団体が天皇御即位30年を記念する祭典を開いたとしても、何の問題もない。しかし、政府主催の「御在位三十年記念式典」は、2月24日に同じ国立劇場で既に開催され、そこには天皇、皇后両陛下も出席された。それにもかかわらず、安倍総理が出席して祝辞を読み上げる祭典を、わざわざこの統一地方選のど真ん中で開催する意図は何なのか。考えてみれば誰にでもわかることだ。

次のページ
安倍総理の政治利用に野党も相乗り