岡田:細かいという意味では、松山さんのほうが。映画「関ヶ原」(17年)で共演したとき、松山さんは「(自分が演じる)直江兼続は田舎者だから袴をちょっと短くしました。だから袴をチラッと見てください」と。一応見ましたけど、観客の誰にも伝わらなかったと思います(笑)。

松山:すみません(笑)。

岡田:自分が細かいかはわかりませんが、松山さんのような役者さんに気づいてもらえるのはありがたいです。

──財前は組織の論理に翻弄されますが、お二人は集団の考え方と自分の理想との間で悩んだ経験は?

松山:僕は昔からチームプレーは苦手なんですが、本番が始まると、そういう思いは頭から消えちゃいます。健康で現場に立てたらそれでいいんじゃないかって思うんです。「上に立とう」とか思うから、ややこしくなる。

岡田:若いときはありましたけどね。でも、一流の人と仕事ができたら、それだけでうれしい。作品を作っていると、役同士で心が触れ合うことがある。その瞬間はやっぱり、何物にも代えがたいですね。

(取材・文/本誌・野村美絵)

週刊朝日  2019年4月19日号