全国の刑務所に収容された受刑者への日用品の販売は、以前は現職刑務官やOBらを会員とする財団法人「矯正協会」が一手に担ってきた。だが、11年から東京にある民間の指定業者に変更された。日用品の価格が高騰したのは、そのころからだという。

 民間に委託した理由は何か。矯正協会は04年、受刑者に日用品を販売した収益の一部を全国8カ所の矯正管区に送金し、職員のレクリエーション費や慶弔費などに充てていたことが発覚している。また、検事総長経験者が長年にわたって、会長職に天下っていたことが問題視されたこともある。

 だが、法務省は矯正協会が販売業務から撤退した原因については答えず、業者の選定理由を説明した。同省矯正局の担当者が語る。

「刑務所など刑事施設は、過疎地に立地しているところもあります。全国に販売ルートを持ち、物流関係が整っている業者でなければ対応が困難です。全国の施設一括で、公募によって選定しています。日用品の価格は、全国の刑務所とも同じ業者ですから統一されています」

 5年ごとの契約というが、11年も16年も同じ業者に決まっている。この指定業者に日用品の価格が高い理由を尋ねたが、「商品などの詳細なことについては、お答えしかねます」(広報室)と回答するのみだった。

 一方、弁護士会から勧告を受けた大阪刑務所はどう対応するのか。総務部の調査官は次のように答えた。

「(弁護士会から)ご指摘頂いたことは把握しており、今後とも適正な被収容者の処遇に努めて参りたい。そのつど、業者の方とも必要に応じて協議していますので、商品や価格が変わることもあると思います」

 ティッシュの素材について聞くと、こう説明した。

「施設の建物や配管の構造が複雑で、過去に(トイレに流した紙が)詰まってしまったことがあったようです。被収容者の生活環境にも影響してきますので、水に溶けやすく流れやすいものを選定していると思います」

 このため、高品質になったということらしい。刑務所や拘置所の被収容者の支援活動などを行うNPO法人「監獄人権センター」代表の海渡雄一弁護士がこう指摘する。

「日用品の価格が高いという受刑者からの苦情は、大阪ばかりでなく全国の刑務所から上がっています。法務省は、受刑者への物品販売事業をやってくれる業者が他にないから仕方がないと説明しています。とはいえ、改善策はあるはずで、大阪弁護士会が勧告したのは、至極まっとうな話です」

 刑務作業の報奨金は最低賃金以下で、支給される官給品も質素なものなのに、受刑者が自腹で購入する日用品は“高級”というのはどう考えても不合理だ。受刑者間の格差拡大を助長することも明白。奇妙というほかない日本の刑務所事情なのだ。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事