東邦の石川昂弥
東邦の石川昂弥
星稜の奥川恭伸
星稜の奥川恭伸
横浜の及川雅貴
横浜の及川雅貴

 東邦(愛知)の優勝で幕を閉じた春の選抜高校野球甲子園で躍動した選手たちを振り返ると、夏の大混戦を予感させる逸材が数多くいた。

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 甲子園で2千試合以上を取材・観戦するスポーツライターの楊順行氏は、まず怪物投手の名を挙げた。

「星稜(石川)の奥川恭伸は強烈な印象を残しました。初戦の履正社(大阪)戦で17奪三振と、大会ナンバー1投手の期待にたがわぬ圧巻の投球。文句なしの活躍でした」

 優勝候補にも挙げられていた星稜は、準優勝の習志野(千葉)に2回戦で敗れるも、奥川はその試合でも10奪三振。夏でのさらなる進化を期待させた。

 奥川と双璧を成すと言われた横浜(神奈川)の好左腕・及川雅貴は、初戦で連続四球から打ち込まれ敗退。とはいえ、評価は変わらない。

「崩れると立て直しが効かないとよく言われますが、これはストライクという球がボールになるなど、今回は辛い判定に泣かされた。不運だったと思います。実力に疑いはなく、夏でのリベンジを期待したい」

 頂点に立った東邦の石川昂弥も夏に期待したい選手の一人だ。大会を通して、投げては全5試合に先発し、1完封含む3完投。打っては3本塁打と、平成元年以来30年ぶり、最多5度目の優勝に貢献した。

「右手のリストが強く、決勝での2本塁打はいずれも右方向。強打者ぶりを見せつけました」

 石川は“二刀流”として脚光を浴びたが、投手を兼任するようになったのは昨秋のことだという。

「捕手に聞けば、投手を始めてすぐにインコースにバンバン投げ込んでいたと。普通であれば、インコースに投げられるまでに時間を要するんですが、センスは当然ながら、度胸も満点なんでしょう。ただ、本人は『やっぱり打つ方が楽しい』そうですが」

 そのほか、智弁和歌山の捕手・東妻純平は、プロの技を思わせる強肩が印象に残ったという。

ソフトバンクの“甲斐キャノン”を彷彿とさせる牽制を見せて球場を沸かせました。彼は今春で甲子園の舞台は4度目。夏に5度目の甲子園があるか、注目です」

 もちろん、選抜に出場していない選手にも見逃せない逸材は多い。

「奥川、及川に加え、高校ビッグ4と呼ばれる創志学園(岡山)の西純矢、大船渡(岩手)の佐々木朗希が、どう夏を勝ち抜くか。そして、スーパー中学生として話題になった150キロ投手の森木大智は高知に進学しました。早々に表舞台に出てくるかも含め、興味は尽きません」

 夏には元号が令和になって最初の甲子園、第101回選手権大会が待っている。きら星がめじろ押し、群雄割拠の大会が期待される。
(本誌・秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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