人生100年時代、アクティブシニアの最大の不安は、元気なうちから高齢者施設に入居させられること。
とはいえ、「最期は子に迷惑をかけたっていい」と思えるのか。心身が衰えてきたら施設という選択が親子にとってベターという場合もある。目安となるのが、子どもの考える「在宅の限界点」。人によってさまざまだが、多く見られるポイントが「親が一人でトイレに行けるかどうか」。そして、一人でトイレに行くのが無理な場合、配偶者もしくは子どもなど、家族が下の世話をできるかどうかだという。
ケアマネジャー歴18年で、これまで多くの在宅介護の現場に携わってきた牧野雅美さん(アースサポート)さんは言う。
「社会的支援を要する“要支援”状態と、介護を要する“要介護”状態とでは、家族の本音が出る度合いが大きく変わってくる。要介護の状態に入ってきたときに、家族の本音が見え始める傾向にあります。排泄に何らかの支えを必要とする要介護2以上の状態になったとき、家族がどう感じるかが、在宅の限界点の一つの目安になりやすい」
一方で、施設に対する“見えない不安”が「入りたくない」という気持ちを増長させているケースも多い。「明確な理由は特にないけれど、自分が何となく抱いている施設へのマイナスイメージから、かたくなに入居を嫌がる人もいます」(牧野さん)
それを解決するのが、先回りの見学。一口に施設と言っても、その種類はさまざま。利用者の希望や要介護度によってタイプが異なる。
「一般的に自由度が高いのが、ケアハウス、個室のある有料老人ホーム、サ高住。これらは基本的にプライバシーが守られて過ごすことができます」(同)
ただし、例えば同じ「有料老人ホーム」でも、一般のマンションに近いところから、食事やレクリエーションを提供するところまでさまざま。一概にはくくれないため、事前に体験するなどして施設の特徴をよく見極めよう。
個々の施設によって、入居者の様子も変われば自由度も雰囲気も変わる。自立型の施設を選べば、歌や折り紙などのレクリエーションもなく、自宅と同じように過ごせるところも多い。自分にとって譲れないポイントは何か、どんな施設だったら入ってもいいと思えるか、元気なうちに、いろいろと見学しておくことが、見えない不安の解消に役立つ。