コーラの芸はね、海外でやってもウケるんです。世界中にコカ・コーラもペプシコーラもあるから。

 手品ってとっさにやられると、お客さんに「見破らないと負け」みたいな意識が出るんだよね。いきなりクイズを出されたような気がして、お客さんも「悔しい」って思って、実は楽しくなかったりする。

 同業のマジシャンからは「あんなのマジックじゃない」とバッシングされたこともありますよ。でも僕は一番よくないのは手品をやる人が「どうだ!」って目線になることだと思う。だから僕は「こうですよ」って種明かしを見せてあげるほうが、お客さんとフィフティ・フィフティの関係になると思うんです。それで10個の問題のうち2個くらいなら「え? どうやったの?」って、わからないのがあってもいいよね、と。

 それに気づけたのは自分が落ちこぼれだった、子ども時代の体験があるからかもしれないですね。

――大きな転機は34歳のとき。テレビ番組「お笑いスター誕生!!」に出演し、その名が全国に知られた。ウケたのは、とりつくろわない姿。その性格は母親ゆずりだという。

 あのときはね、たぶんテレビ用につくろっていなかった「無防備さ」がウケたんだと思うんだよね。テレビがなんだかもよくわかってなかったから、ストリップやキャバレーでやってるそのままにやったんです。舞台に出て「よろしくお願いします」って言っただけで、お客さんがクスクス笑ったのね。後ろで何かやってるんじゃないか?と思って振り返っちゃったもんね。

 今も子どもみたいだって言われる。例えば、僕が弟子に「お茶飲まない?」って電話すると「あ~、いま営業で長野なんですよ~」とか言うわけ。でも「ウソだな」って本能的にわかる。それでアパートに行ってみると本人がいる。弟子には「普通の大人は来ないですよ! 師匠はやりづらい!」って言われるんだけどね。

 おふくろと僕は似たようなところがあって、忘れられないのはね、僕が30歳すぎてようやく少しお金ができて、おふくろに「お小遣い」って3千円渡したとき。普通は「ありがとう」って言うじゃない? でもおふくろは「これだけか?」って言ったんだよね(笑)。本心なんだろうけど、普通の大人だったら「もっといっぱい小遣いくれるようにがんばってよ」とか付け足すよね。でもおふくろはそんなふうに「つくろう」ことができないんだよね。

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