だが、今年は違う。ベンチでは選手たちが笑顔で声を張り上げている姿が目立つ。まだ開幕して間もないが、負けていても、伸び伸びと野球をしている印象を受ける。

 矢野監督の意識の根底には選手を「守る」という意識があるのだろう。春季キャンプから「自主性」をテーマに掲げ、どうすれば勝てるか、どうすればレギュラーを勝ち取れるか選手自身の頭で考え抜いて取り組むことを求めている。また、目先の勝利だけでなく、選手の野球人生を考えて発言する。

 象徴的なのは藤浪への接し方だ。近年悩まされ続けている制球難が今年も解消せず、春季キャンプ、オープン戦と右打者の頭部付近への死球が目立った。「試合に投げさせるべきではない」と指摘する声は多く、相手球団は左打者を並べるなど策を講じた。

 だが、矢野監督は藤浪へ批判的なコメントをメディアに一切出さなかった。

 阪神は平成での30年間で一度も日本一になれなかった。5月1日から新元号の「令和」が施行される。猛虎復活で矢野監督は「令和の名将」になれるか。熱血漢の指揮官がチームをどう再建するか見物だ。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事