「吉永小百合さんにも…」沢木耕太郎の“相手の心を開く”極意 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「吉永小百合さんにも…」沢木耕太郎の“相手の心を開く”極意

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松岡かすみ週刊朝日#林真理子
沢木耕太郎(さわき・こうたろう)/1947年、東京都生まれ。ルポライターとして出発し、79年に『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞。その後も『深夜特急』や『檀』など名作を次々に発表し、2006年に『凍』で講談社ノンフィクション賞、14年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞。近年は長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』を刊行。近著に、25年分のエッセーを収録した『銀河を渡る 全エッセイ』、『作家との遭遇 全作家論』。 (撮影/写真部・小原雄輝)

沢木耕太郎(さわき・こうたろう)/1947年、東京都生まれ。ルポライターとして出発し、79年に『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞。その後も『深夜特急』や『檀』など名作を次々に発表し、2006年に『凍』で講談社ノンフィクション賞、14年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞。近年は長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』を刊行。近著に、25年分のエッセーを収録した『銀河を渡る 全エッセイ』、『作家との遭遇 全作家論』。 (撮影/写真部・小原雄輝)

沢木耕太郎さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・小原雄輝)

沢木耕太郎さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・小原雄輝)

林:沢木さんはスポーツ選手のこともよく書いてますけど、まずはそのスポーツのことを学ぶんですか。

沢木:もちろん自分ではできないことがいっぱいあって、たとえばクライミングね。

林:『凍』(2005年)ですね。

沢木:はい。山野井泰史・妙子ご夫妻のことを書いたんだけど、僕はロープの結び方すら知らなかったの。山野井ご夫妻から話を聞いて、その話が僕の頭の中で映像に結び付くかどうかなんですよ。氷壁を登っているときに、彼がアイスバイル(氷壁に打ち込む金づち状の道具)をこうやって打ち込むという姿が頭の中で描けなければ書けない。だから「このときのロープの結び方は?」って聞いて、実際にロープを使って教えてもらったり、「このときアイゼンの蹴り込み方はどうなの?」って聞いて実演してもらったり。最終的には山まで一緒に行くことになるんだけどね。

林:えっ、実際にその山まで行くんですか? ワワワ……。

沢木:僕、山は高尾山にも登ったことがないくらいだったんだけど、山野井君が「自分たちがギャチュンカン(ヒマラヤ山脈にある標高7952メートルの山)に登ったときに残してきたゴミを回収に行く」と言うので、「おもしろそうだな。俺も行こうかな」と言って、一緒に行くことになったんです。

林:高尾山にも登ったことがないのに?

沢木:そう。その前に富士山に山野井ご夫妻と一緒に行くことになって、ご夫妻から「呼吸はこうして」とか教わりながら登っていったら、ものすごい短時間で山頂まで登っちゃったの。

林:へぇ~、すごい。

沢木:パルスオキシメーターといって血中酸素の濃度を測る機器があったので、測ってみたんです。そしたらわりと数値が高くて、これなら空気が薄くても耐えられるというんで、結局、高尾山にも登らずに富士山に登って、その2~3カ月後にヒマラヤに行ったんです。

林:うわあ、すごい。で、そのナントカいう山に登ったんですか。

沢木:さすがにギャチュンカンは約8千メートルなので、頂上までは行かれなかったんだけど、5千~6千メートルぐらいまで一緒に行って、「ああ、こういうことなんだ」と知って、帰ってきて書き始めたんです。

林:私も『凍』は読みましたけど、山野井ご夫妻って、どちらも手の指とか足の指を失ったわけでしょう。でも、「自分が好きで登ったんだから、そんなことどうとも思っていない」っておっしゃるじゃないですか。あれは驚愕でした。

沢木:特に奥さんの妙子さんがすごい人で、みんなもそう思うらしいんだけど、後悔とか愚痴とかを言ってるのを聞いたことがない。手の指が凍傷で10本ないんですよ。手のひらだけで生活してるわけ。

林:まだ登ってるんですか。

沢木:もちろん。すごい人がいるよなあって思いますよ。世の中に広く知られているわけではない、知る人ぞ知るという人たちが巷にいるじゃないですか。僕にはそういう人に対する畏れみたいなものがあって、だからあんまり偉そうなこととか浮かれたことを言ったり書いたりしたらいけないなと思いますね。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年4月12日号より抜粋


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