将来の景気が悪化して金利が下がろうとも、将来の景気が好転し金利が上昇しようとも、そんなことにはお構いなく国債を買い続ける中央銀行のような存在があれば、イールドカーブは将来の景気を何も語らない。

 現在日本の国債10年物の利回りはマイナス0.1%前後。一部の特殊なトレーダーを除き、投資家はそんな債券など購入しない。償還する満期まで持ち続ければ、必ず損するからだ。

 それでも中央銀行である日銀が「爆買い」しているのは、国債でもうけたいという意図がない証拠だ。

 国債の金利の関係から将来の景気動向を予想するより重要なのは、長期金利の低下で、地域金融機関の体力が限界に近づいていることを知ることだ。

 異次元の金融緩和で、日銀は長期国債をいまも「爆買い」している。その結果、長期国債の金利が抑えられ、上昇する見通しが立たない。長期金利の低下が長引けば、地域金融機関は融資によって利ざやを稼ぎづらくなり、経営状態が悪化する。

 1970年代、FRBは長期金利を高めに誘導することで金融機関の経営を救った。日銀はそれと全く逆のことをしている。地域金融機関の経営が苦しいのを横目に、いつまで異次元緩和を続けられるのか?

 地域金融機関経営はMondayだ(地域金融機関経営は問題だ)。

週刊朝日  2019年4月12日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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