そして56歳ということは、そろそろ第二の人生を考え始めてもいい時期ですよね。私の場合、天下り問題の責任を取る形で、なし崩し的に第二の人生がスタートしちゃったわけだけど、「仕事を辞めたら何をやろうかな」と、第二の人生を考える時間というのも幸せそうだな、と思いますよ。

 私自身は、第二の人生に入ってから、文科省時代とは人間関係がガラッと変わりました。そして今の方が楽しいと断言できます。昔の付き合いも、全体の2割ぐらいは残っているけれど、8割方は新しい交友関係で新たに出会った人たち。私にとっては、昔の職場の人間関係よりも、この2年間で新たに仲良くなった人の方が、もっと気が合う存在です。自分の気持ちの持ちようと、人との関わり方次第で、第二の人生はかなり楽しいものになりますよ。

 だからあなたも今の職場の人間関係をそれほど重視せず、これからの人生の幸せを考えた方が発展的でしょう。定年になって別の生き方が始まると、そこでまた新たな人間関係が生まれるものです。私は、豊かな人生は、そうやって形作られるのだと思います。組織に属していると、どうしても狭い人間関係の中で考えがちですが、もっと広い世界と可能性がある。あなたが本来持っている可能性が、第二の人生で開花することだって大いにあります。

 職場だけがあなたの人生じゃない。そしてあなたの幸せは、職場にしかないわけじゃない。それを忘れずに、前向きに切り替えて考えてみてください。

週刊朝日  2019年4月12日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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