[左]日本医科大学病院 副院長・泌尿器科部長・教授 近藤幸尋医師/[右]東京医科大学病院 泌尿器科診療科長・ロボット手術支援センター長、主任教授 大野芳正医師
[左]日本医科大学病院 副院長・泌尿器科部長・教授 近藤幸尋医師/[右]東京医科大学病院 泌尿器科診療科長・ロボット手術支援センター長、主任教授 大野芳正医師
前立腺がん データ (週刊朝日2019年4月5日号より)
前立腺がん データ (週刊朝日2019年4月5日号より)
前立腺がんのリスク別治療法 (週刊朝日2019年4月5日号より)
前立腺がんのリスク別治療法 (週刊朝日2019年4月5日号より)

 男性のがん患者数の第4位を占める前立腺がんは、どのステージでも治療の種類が多い。最初に選択されることが多い手術では、ロボット手術が主流になっている。手術では、避けられない合併症が気になるところだ。

【主な症状、治療法は?前立腺がんに関するデータはこちら】

 前立腺は膀胱の下にある、男性特有の臓器だ。正常では、くるみ大で、精液の一部を産生する働きをもち、中に尿道が通っている。前立腺に発生する前立腺がんは、60代後半から患者数が増える。患者数は男性のがんの第4位だが、生涯がん死亡リスクは1%と低い。

 前立腺がんは早期にはほとんど症状がないが、血液検査のPSA(前立腺特異抗原)検診で、早期発見が可能だ。全国の8割以上の自治体でPSA検診がおこなわれており、早期に見つかるケースが増えている。

 PSAの基準値は0~4ng/ml。4を超えるとがんのリスクは高くなる。しかしPSAの数値はがん以外の要因でも上がることがあるため、数カ月かけて複数回検査して判断する。そのほか、経直腸エコー(超音波診断)やMRI(磁気共鳴断層撮影)検査などをおこない、最終的には前立腺の組織をとって調べる生検で診断される。

 がんが前立腺内にとどまるものを低リスク・中間リスク、前立腺を包む被膜の外に広がったものが高リスク、精のうなど周囲の臓器に広がったものが超高リスクとされる。

 前立腺がんの治療法は選択肢が多い。図にあるように、ステージに合わせて、監視療法、手術、放射線治療、ホルモン療法、薬物療法(抗がん剤治療)がある。放射線治療は手術の補助的な位置付けと考えられがちだが、前立腺がんでは根治治療として単独でもおこなわれ、手術と同じウェートを占めるのも特徴的だ。

 また、前立腺がんはほかのがんに比べて、悪性度が高くなければ、進行がゆっくりであることも特徴の一つだ。

 がんと診断されてから治療にとりかかるまで、時間的に余裕があるケースが多い。再発も、悪性でなければ、5~10年経ってから再発するなど、ほかのがんに適用される時間的な間隔よりも長い。そのため、治療では10年生存率を一つの目安にすることが多い。

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