本来漢方は、おなかや脈を触り、舌を観察するといった独自の診察方法を用いて、患者に合った漢方薬を処方する。しかし病院の場合、ほとんどの医師は漢方を専門的に学んでいない。そのため西洋薬を選ぶのと同じように、主に「症状」に応じて処方を決めている。
「多く使われている処方は定番となっているものなので、症状だけで選んでもあまり外れることはありません」(同)
また漢方薬は、生薬を細かく刻み配合したものを煮出して飲む、いわゆる「煎じ薬」が本来のスタイル。しかし一般的な病院では、煎じ薬を顆粒状に加工した「エキス製剤」が主流だ。煎じ薬よりも効果は落ちるが、持ち運びにも便利で、お湯か水があればすぐに飲むことができる。
漢方薬は比較的副作用が少ないとはいえ、ゼロではない。またからだに優しいイメージが強いため「手術や西洋薬は嫌。漢方だけで治療したい」という人もいるが、新見医師は、
「まず切れ味のいい西洋医学の治療を検討すべき。がんや重度の糖尿病を漢方だけで治すことはできません」
と話す。
数は少ないものの、西洋薬よりも漢方薬のほうが効果を期待できる病気や症状もある。その一つが、突然ふくらはぎがけいれんを起こす「こむらがえり(足のつり)」だ。芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)にはけいれんを起きにくくする作用があるだけでなく、即効性があり、痛みが出てから飲んでもすぐに楽になる。
風邪も漢方薬が向いている病気で、葛根湯や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などをひきはじめに飲むと、悪化させることなく早く治すことができる。
「西洋医学と漢方医学のどちらが優れているというのではなく、異なる良さがあります。それぞれの得意分野を生かすことで、治療の幅を広げることができるのです」(同)
(ライター・熊谷わこ)
※週刊朝日 2019年4月5日号