ただの咳が続く大人の百日咳とは違い、特徴的な咳と咳以外の症状がみられるのが赤ちゃんの百日咳の特徴です。特徴的な咳とは、コンコンコンという連続的な咳の後に空気を吸い込む「ヒューー」という音が出ます。ミルクを飲んだ後に咳こんで嘔吐してしまうこともあります。百日咳に感染した赤ちゃんは、このような症状が出て受診することが多いです。咳以外の症状では無呼吸がよくみられます。無呼吸とは、呼吸をとめてしまうことで、百日咳以外の重症感染症でもみられる症状で、気づかないでいると呼吸停止から心停止になってしまうこともあります。また、まれな症状ではありますが、百日咳の菌が悪さをして脳症を起こすこともあります。

 赤ちゃんの百日咳の主な感染経路は、お兄ちゃん、お姉ちゃん、両親と祖父母だと報告されています。実際に、百日咳になった赤ちゃんの家族が長引く咳などの呼吸器症状を有していた割合は70%に上ります。百日咳は赤ちゃんのころに行うワクチン接種で予防されているのではないか、と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、定期接種のワクチンを打っていても小学校に上がる前までには抗体がほとんどなくなっているというデータがあります。

 日本でのワクチンの定期接種は生後3カ月から1歳半までに4回行われるものだけです。アメリカでは赤ちゃんの時期だけでなく、就学前や10代でも定期接種が行われています。ワクチン接種の開始時期も、生後6週間からはじめる国もあります。

 海外では、妊婦さんへのワクチン接種も積極的に推奨されています。妊婦さんにワクチン接種をすると、妊婦さんについた抗体が胎児へ移行します。百日咳になり重症化するのは3カ月未満の赤ちゃんなので、抗体を持ちながら生まれてくれば百日咳で重症化するリスクがかなり減ります。しかし、日本で販売されているワクチンは妊婦さんへの使用経験がまだないので推奨が難しいという現状があります。

 妊婦さんへのワクチン接種は積極的に推奨されていませんが、最近、日本でも大人の百日咳ワクチンが打てるようになりました。就学前の子どもにも定期接種以外のワクチンの任意接種が追加され、日本小児科学会が推奨しています。ともに、任意接種であるので自費になりますが、小さい子どもと触れ合う機会の多い医療従事者や、抗体が低下した子どもは積極的にワクチン接種をしましょう。大人の百日咳の流行を防ぐことは、百日咳で命を落とす赤ちゃんをひとりでも救うことにつながります。(文・濱田ももこ)