室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、JOC・竹田恒和会長の賄賂疑惑について、マスコミの曖昧な報道姿勢を疑問視する。

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 この原稿を書いているのが3月17日。昨日16日のニュースによれば、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、退任の意向を関係者に伝えたとか。(その後、19日のJOC理事会で6月末の任期満了で退任すると正式に表明した)

 大手新聞をざっくり見てみたが、やばいくらい中身がない。

 竹田会長といえば、2020年東京五輪を招致するため賄賂を渡したんじゃないかと疑惑を持たれ、フランス司法当局から捜査されているお方。その方がJOCの会長を辞めたいといっておる。16日に共同通信が出した記事が、

<開幕まで500日を切った中で退く事態となれば大会への影響が懸念される>

<竹田氏は一貫して潔白を主張しているが、招致疑惑問題の東京大会への影響を強く憂慮する国内外の声に、退任が不可避な情勢となっていた>というもの。その後、1日経ったのに、どこの新聞記事も似たり寄ったり。

 マスコミは疑惑が持たれる前は竹田氏や、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の話をありがたがって載せたんだから、竹田氏が辞めるという情報を得たのなら、彼らの居場所を突き止め、彼らの話を細かく聞いてこなきゃダメじゃん。

 なぜ潔白を主張しているのに、JOCの会長を辞めるの? つーか、辞めるの、辞めさせられるの? フランスの捜査はどこまで進んでる? 気持ち悪いのは、フランス当局の判断が出るまで、賄賂疑惑に関してグレーにしとこうという、この国のマスコミの態度。

 マスコミは東京オリンピックを成功させたいんでしょ。だったら、開催に関して汚れた部分になりそうな、賄賂疑惑をなぜ独自追及しない? この国には自浄作用がないのか? 情けない。19日に竹田氏の退任が決まり、その後、彼が会見を開いたら、詳しい記事を書くの? なんどもいうけど、今日は17日。今から予言しとく。たぶん、会見で竹田氏が話したことが、そのまま記事になる。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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