秦正理
“免許からの卒業”を啓発しているNEXCO東日本の動画が物議を醸している。
「父と母の卒業旅行」と題したウェブ限定動画が感動を呼ぶと話題になり、2月末の公開から約3週間で再生回数は73万回を超える。
80歳を目前に控えた男性が、運転を心配する家族に促され、夫婦で最後のドライブに出かける。その帰路、立ち寄った場所で待ち構える家族が“運転卒業式”のサプライズを行うという内容だ。コメント欄には「涙が止まらなかった」と賛辞が並ぶ一方で、「危ないからと免許の自主返納をすすめながら、長距離運転を提案するのか」といった否定的な声もある。怒りの声をあげるのは業界関係者だ。「動画を見て腹が立ちましたよ。こんなきれいに丸く収まるのなら自主返納の数はもっと増えているはず。感動で済ませられるほど現実は甘くない」
高齢者による自動車事故の報道は後を絶たない。免許の自主返納は進んでいるのか。警察庁の運転免許統計（2017年）によれば、75歳以上の運転免許保有者は約540万人に対し、返納者は約25万人。年々、増加傾向にはあるものの、運転者の割合で考えれば、ごくごく少数だ。高齢ドライバーの安全な運転の実現に取り組むNPO法人高齢者安全運転支援研究会の岩越和紀理事長はこう指摘する。
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秦正理
ニュース週刊誌｢AERA｣記者。増刊｢甲子園｣の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。
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