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 記憶に刻まれる大会となった世界選手権。会場に来ていたファンに、羽生はどんな存在なのか聞いてみた。

 羽生から不思議なパワーをもらったという女性(57)もいる。昨年11月、羽生がけがをした同じ月に脳梗塞を発症し、左手に不自由が生じてしまったという。そこから現在は回復。

「1月末に退院できたのも、ここに来れたのも、今大会のチケットがあったから」

 治療やリハビリで、励みになったのが羽生だ。

「羽生さんは必ず前を向いて努力する姿を見せてくれた。羽生さんのがんばる姿から勇気をもらった。(結果がどうであれ)羽生さんにありがとうと言いたい。私にとって、恋人であり息子であり、尊敬する人」

 女性が見せてくれたのは、羽生ファンや気持ちを分かち合える人に出会ったら手渡すための、折り紙で作った桜。羽生という共通の話題で友人もでき、全国に縁が広がったそうだ。

「羽生さんは、もう現役(生活)は長くないと思っています。彼の人生が幸せであればいいんです」

 気になるのは、今後。平昌五輪の後に、羽生は「4回転アクセルへの挑戦」を口にしていた。絶対王者の軌跡に新たな一行を付け加えてくれることを切に願っている。

(本誌・取材班)

※週刊朝日2019年4月5日号を一部改変