【文豪の湯宿】“執筆専用室”があるホテル 佐藤春夫の定宿とは? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】“執筆専用室”があるホテル 佐藤春夫の定宿とは?

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鈴木裕也週刊朝日#旅行
佐久ホテル(さくほてる)/長野県佐久市岩村田中山道今宿553小林一茶、葛飾北斎、島崎藤村、若山牧水など多くの文人墨客が宿泊した

佐久ホテル(さくほてる)/長野県佐久市岩村田中山道今宿553
小林一茶、葛飾北斎、島崎藤村、若山牧水など多くの文人墨客が宿泊した

創業は室町時代。信州で最も歴史のある温泉宿はもちろん源泉100%

創業は室町時代。信州で最も歴史のある温泉宿はもちろん源泉100%

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「佐藤春夫」の「佐久ホテル」(長野県・旭湯温泉)だ。

【写真】佐久ホテルに飾られている佐藤春夫の直筆の書

*  *  *
 佐久ホテルの浅間の間には佐藤春夫の直筆の書が飾られている。

<根腰山すそ萩尾花 秋は浅間のけむりさへ 金雲となりゆつさりと 上つ毛の空ながれゆく>

「秋ばれ」と題されたこの書は、春夫が佐久ホテルに贈ったものだ。昭和20年4月に佐久市横根地区の借家に疎開した際に、執筆などに利用するための専用室をホテルが建ててくれたことへのお礼である。終戦後に帰京を勧められても、春夫は頑としてこの地にとどまった。

 スケッチブックを片手に付近を散策するのが佐久での春夫の日課だった。着流しに帽子という姿で、疎開先の山村からホテルまで小一時間の道を散歩がてらに通い、専用部屋で執筆に励んだ。『佐久の草笛』『まゆみ抄』などの詩集や歴史ロマンなど多くの著作がこの時期に生まれた。

 文壇の重鎮として東京の仕事が増え、昭和26年10月には佐久を離れる。「先生に末永く住んでいただきたい」という地域の人々の願いに応えて、何度も佐久に戻っていたが、ついに昭和30年、横根の山あいに別邸「見山居」を建てた。佐久は、詩人・佐藤春夫の第二の故郷となった。

(文/本誌・鈴木裕也)

■佐久ホテル(さくほてる)
長野県佐久市岩村田中山道今宿553

週刊朝日  2019年3月29日号


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