渡辺医師らは08 年から現在まで、延べ6万件の患者データをサーバーに蓄積している。それを医師が解析することでいろいろなことがわかってきたという。将来的には、日本全国から100万規模のビッグデータを集約し、分析することを目指している。

「ビッグデータを活用すれば、西洋医学に比肩するような臨床現場における治療の標準化は可能だと思います。名医にかかると治るけどそうじゃないと治らないという医療では、西洋医学と並ぶことはできません。今後は、漢方医療をできるだけ“見える化”していきたいです」

 今回「国際疾病分類」に認められたことで、新しいフェーズを目指せる、と渡辺医師は話す。

「漢方の将来像は、ビッグデータを活用して漢方ならではのエビデンスを構築していくこと。そしてさらに漢方の価値を上げ、わが国はもちろん、国際的な普及を目指して、伝統医学としてWHOに、真の“お墨付き”をもらうことだと考えています」

 漢方は新しい時代に入ったと、渡辺医師は今後の展開に期待を寄せながら、そう繰り返した。

慶応義塾大学医学部漢方医学センター、同環境情報学部教授
渡辺賢治医師
慶応義塾大学医学部卒。同医学部内科、北里研究所東洋医学総合研究所ほかを経て現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医。アメリカ内科学会上級会員、日本東洋医学会専門医、WHOFIC伝統医学分類委員会共同議長ほか。

(文/伊波達也)

※週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」から