ただ、角度を変えると、また違った世界が見えてくる。フリーの演技構成点は75・09とトップ。スケーティングの技術や身のこなしなど10点満点で評価される各要素について、9人の審判がほとんどで9・0以上をつけていたのだ。芸術性では他の選手の追随を許さないことがわかる。

 ファンにも練習熱心な努力家で知られる宮原。

「宮原選手のプログラムには、真面目さ、人柄の良さが前面に出ています。そのプログラムを見て『良くない』という人はいないと思います」(佐野さん)

 ともに世界選手権に出場した経験のあるプロフィギュアスケーターの村上佳菜子さんもこう話す。

「私は宮原選手の滑りを見るたび魂が震えるんです。あの表現力。あの美しい演技。観客が魅了されるところの一つだと思います」

 プログラムの中に必要なジャンプなどの要素を入れるのはもちろん、選手は音楽を解釈し、自分の世界を作り、表現する。

「同じ演目でも滑る人によって全然違う。曲の解釈も振り付けも、魅せ方も違うんです。スポーツですが、スポーツを超えた表現があるのではないでしょうか」(村上さん)

 4分間でどんな世界を見せてくれるか。埼玉での宮原のフリーに注目だ。

(本誌・取材班)

※週刊朝日 2019年3月29日号に加筆