「クラウンはレクサスが登場するまで、トヨタのトップブランド。かつて『いつかはクラウン』というキャッチコピーのCMもあり、男性が買う自動車の“ゴール”でもありました」(岩貞さん)

 終身雇用が当たり前だった時代の男性にとって、クラウンは“夢”や“憧れ”だった。しかし、時代の変遷とともに働き方は変わり、終身雇用の時代も終わった。自身の出世とともに車も“出世する”という物語は幻になりつつある、と岩貞さんは指摘する。

 レクサスの登場によって立ち位置が中途半端になってしまったクラウンの新たな一手。既存の枠にとらわれない西野の起用は、良くも悪くもクラウンがつくりあげてきたイメージを壊すのにマッチしていると評価する。

「起用のみならず、『金×紺』という思い切ったカラーにしたのも、ここまでやらないとイメージは変わらない、という決意に見えました」(岩貞さん)

 一方、インターネット上ではこんな見方も。西野のコンビ名に由来した「金紺(キンコン)カラー」だ、という指摘だ。そういった“疑惑”の声を打ち消すように西野は自身のブログで自虐した。

<金と紺の込み合わせはナポレオンの帽子の色で、“キンコン”西野とは関係がございません。結果的に悲惨なダジャレになっちゃってるパターンです。>

 トヨタ広報担当者も、

「一部の方からそういう反応があったことは後から知りました。偶然かとは思いましたが、ニュートラルに受け止めています」

 と偶然を強調した。

「今は車を買うのも口コミが大事。『変な色』『西野』『クラウン』と検索してもらうだけでも宣伝効果がある。若年層に訴求するにはSNSもうってつけです」(岩貞さん)

 偶然も重なってにわかに注目を集めた「ニシノクラウン」。“おじさんの車”から脱皮できるのか。(本誌・秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

著者プロフィールを見る
秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

秦正理の記事一覧はこちら