ワインの「酸化」は酸っぱくなるわけではない!? “微生物屋”が語る酸味 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ワインの「酸化」は酸っぱくなるわけではない!? “微生物屋”が語る酸味

連載「ワインは毒か、それとも薬か」

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岩田健太郎週刊朝日#ライフ
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

ワインの「酸味」をよく理解できないかもしれない。「酸味」はむしろ、舌を心地よく刺激する独特な風味だ。ワインテイスティングではワインの「酸味」をきちんと味わい、正確に表現できねばならない(写真:getty images)

ワインの「酸味」をよく理解できないかもしれない。「酸味」はむしろ、舌を心地よく刺激する独特な風味だ。ワインテイスティングではワインの「酸味」をきちんと味わい、正確に表現できねばならない(写真:getty images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。

*  *  *
 酸化と酸味は字的に似ている。しかし、両者はまったく異なる概念だ。塩(えん)と塩(しお)がまったく異なるように。

 化学の漢字は誠にわかりにくい。酸化は酸素を加えて(oxidation)電子を放出することだ。これに対して、酸味は水素イオンの移動によって、pHが下がり、「酸性」になり「酸っぱく」(acid, acidity)なることをいう。前者は酸化還元反応の一つで、後者は酸塩基反応を表現している。同じ漢字を使っているからごちゃごちゃになるのだ。

■酸化はワインを劣化させるが、酸っぱくなるわけではない

 厳密には酸化に酸素は必須ではない。しかし、そこまで説明するとややこしくなりだし、ワインを語る場合は「酸化」は基本的に酸素が関与しているので、ここでは割愛する。

 要するに何が言いたいかというと、酸化ではワインは酸っぱくならないのだ。酸化はワインを劣化させる。しかし、酸化のためにワインが「酸っぱくなる」わけではない。酸素がワインに加わった結果、起きる化学反応なだけだ。そして、そこには微生物はまったく介在していない。一方、アルコールは酢酸菌のような微生物の作用で酢酸に変化する。ワインが酸っぱくなってしまうのはそのためだ(酸敗)。
 
 酸敗は腐敗の一種といえる。人間にとって都合の悪い微生物による化学反応を「腐敗」というのだった。もちろん、ワインビネガーのようにわざとブドウを酢にする場合は別で、この場合は「発酵」と呼ぶ。同じ現象でも人間様の役に立つか否かが、ポイントなのだった。


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