「おぼうさんどっとこむ」では戒名の費用は明確だ。会員(入会金1万円)の場合、「信士・信女」は生前で2万円、葬儀後で6万円。「居士・大姉」は生前で8万円、葬儀後で12万円といった具合だ(いずれも宗派指定なし)。

「生きているうちに少しでも仏教に近寄りやすくするため、生前の戒名料は低く設定しています。生前戒名は死ぬための準備ではありません。せっかく戒名にお金を払ったのだから、『その日から仏教の戒めを守るように』という願いが込められています」(林さん)

 生前戒名の動きは仏教界でも広まっている。浄土真宗では戒名にあたる法名を、生前のうちに授けることに取り組む。ほかにも、生前なら数万円といった比較的安い金額で戒名を授ける寺院が目立つ。ネットで戒名を選べるサービスも増えてきた。

 注意点もある。菩提寺がある場合、住職らに相談しないまま戒名をほかで決めると、トラブルのもとになるのだ。長年お世話になった菩提寺に配慮しながら進めよう。

 生前に授かるのが“お得”なようだが、やはり多くの人にとって、戒名の問題は亡くなってから直面するもの。適正相場を知っていれば安心だが、簡単ではない。かかるお布施の目安は、地域や宗派、ランクによってまちまちだからだ。

 例えば最もランクが高いとされる「院居士・院大姉」なら、100万円以上することも珍しくない。基本的な「信士・信女」でも、30万円以上するケースが目立つ。相場といっても幅広く、寺との関係でもっと安くすむことや、逆に高くなることもある。

 前出の島田さんは、戒名は遺族が自由に選べるものではないという。

「寺へのお布施は、地域の共同体の中で決まっていて、檀家の格に応じて分担することになっている。格が下だとされる家は、高いお布施を払ってランクが上の戒名をもらうことは難しい。共同体の中では当然だとされていることだが、外部の人には理解しにくいことです」(島田さん)

 戒名料が高騰している背景には、「檀家制度」が限界にきていることもある。寺は檀家によって維持されてきたが、都市化が進み、寄進する共同体は崩壊しつつある。菩提寺がない人が増える中、寺としては戒名料を高くしないと収入を確保できないという、切実な事情が見え隠れする。

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