男子マラソンに変化の兆しがみられるが、『箱根0区を駆ける者たち』の著者で、スポーツライターの佐藤俊さんは次のように分析する。

「最近の大学駅伝の指導者は、一昔前のように、箱根のためだけに20キロ走をひたすらやらせるようなことは、ほとんどありません。選手と面談して、将来マラソンに挑戦したいなら、シーズン前半はトラックに集中させてスピード強化、後半は距離を踏ませるといった、両輪の練習法をとります。その成果が出ているのではないでしょうか」

 ただ、世界の壁は厚い。今回1位だったレゲセ(エチオピア)は2時間4分48秒と、日本人トップと5分以上の差をつけた。昨年の記録をみると、1位のキプチョゲ(ケニア)は世界新記録で2時間1分39秒。以下、2時間4分台のアフリカ勢がずらりと並び、日本人トップは22位タイの大迫で、2時間5分50秒だった。

「五輪までにアフリカ勢との差を縮めるのは不可能に近い」(佐藤さん)

 奇跡が起こる可能性はないのか。

「ケニアやエチオピアのカラッとした気候とは違う、日本特有の多湿の猛暑や、コースを熟知しているなど地の利がフルに生かされれば……」

 東京五輪まであと1年半。前評判を覆すドラマを期待したい。(本誌・工藤早春)

週刊朝日  2019年3月22日号