クロス選を表明した松井大阪府知事(左)と吉村大阪市長 (c)朝日新聞社
クロス選を表明した松井大阪府知事(左)と吉村大阪市長 (c)朝日新聞社

 大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会代表)と大阪市の吉村洋文市長(同政調会長)は3月8日、公明党と決裂し大阪都構想の実現が困難になったとして、「民意を問う」と辞職。知事・市長の立場を入れ替えて出馬する「クロス選」を正式表明した。4月の統一地方選に合わせて実施される。大阪維新の会に所属する議員がこう話す。

「今回は維新の存亡がかかったものだ。維新はこれまで、政局になると選挙をやって大きくなってきた。橋下徹氏の影が消えてしまっている今回の選挙で負ければ維新は奈落の底に転落し、這い上がれないだろう。正直、松井さんは公明党を選挙で脅せばついてくると思っていたが、甘かった。維新の内部では、吉村さんは勝てるが、松井さんはヘタしたら負けるかもと危ぶんでいる」

 だが、迎え撃つ自民党が2人に勝てる候補を探すのも至難の業だ。自民党府連関係者が言う。

「クロス選のおかげで、一気に統一地方選が盛り上がってきた。左藤章府連会長は、『もうハラでは決まっている』と自信満々だ。今回は公明党が維新とガチンコで喧嘩したので、うちとガッチリ手を組める。大阪出身の俳優、辰巳琢郎氏には断られましたが、財務省出身で元キャスターの村尾信尚氏も候補に挙がっている。共産党、立憲民主党、国民民主党も維新とは距離を置くはず。知事と市長のどちらかを落とせば、都構想はできず、維新は終わる。選挙に強い維新の看板を下ろさざるを得ない」
自民党は11日、知事選に松井氏の元側近だった同府副知事の小西禎一氏(64)の擁立を決めた。選挙戦の鍵を握るのは、維新の創設者でもある橋下徹氏だという。

「衆院大阪12区の補欠選挙にあわせて、3月19日、橋下さんが講演会をする。政治、選挙とは距離を置くと橋下氏は言っているが、これをキッカケに統一地方選や、市長、知事のクロス選で街頭に立って、みんなと走り回ってほしいという待望論がまた大きくなっています」(前出の維新の議員)

 クロス選の結果はいかに。(今西憲之)

週刊朝日  2019年3月22日号

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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