千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師
千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師
※写真はイメージです(写真/getty images)
※写真はイメージです(写真/getty images)

 最近、どうも一人暮らしの親の様子がおかしい。子どもとしては、不安を感じることになります。千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が自身の診療経験をもとに、相談に答えます。

【50代女性からの相談】最近、一人暮らしの母が「自宅にかわいらしい子どもがいる」というのですが、会いに行ったときにはいつも誰もいません。いつもと変わった様子はないですし、まだ頭もはっきりしていると思うのですが、何回聞いても「本当だ」と言って聞かないので心配になります。何かの病気なのでしょうか。

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「家に知らない誰かがいる」。離れて暮らしているご家族としては、とても心配になりますよね。はじめは「もうお母さんたら、そんなことあるわけないでしょ」と笑って返すことができるかもしれませんが、二度三度と同じことを言われると、だんなさんから「お前、今度一回会いに行って様子を見てこいよ」と促されることになるかもしれません。

 結論から申し上げますと、ご相談の内容だけでは病気かどうか、どんな病気かなどを判断することはできません。しかし、実は私も外来で同様の訴えを理由にご家族に連れ添われて受診されてきたケースを経験したことがありました。もちろん、今回のご相談が同じとは限りませんし、病気でない可能性も考えられます。しかし、もし現実と違うことを何度もお話になっているとすれば、やはり一度受診をご検討いただいたほうがよいように思います。

 一番辛いのは、大切なご家族のことが心配で頭から離れないご心労かと思います。何か病気であれば少しでも早く適切な対応を検討することが望ましいですし、問題がなければ安心につながるかと思います。状況は異なるかもしれませんが、私が経験したケースをお話することで、今回のご相談者だけでなく、似たようなお悩みを持っていらっしゃる読者の方が医療につながるきっかけになればと思いご紹介させていただきたいと思います(匿名化のため一部改変してご紹介致します)。

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大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

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