2014年、65歳以上の介護を必要としない高齢者約2000人を対象に、滑舌や舌の力、噛む力など6項目で口腔機能の状態を調べました。3項目以上に該当した人をオーラルフレイルとして、4年後に健康の状態の追跡調査を行ったところ、正常な人に比べて死亡リスクが2・09倍、要介護になる可能性は2・35倍という結果が出ています。わずか4年でこれほど大きな違いが出ることからオーラルフレイルは、早期の発見・対策が必要だということがわかりました。

 これを受けて、オーラルフレイルかどうかを簡単にチェックできる、8項目の「スクリーニング問診表」を作成しました。この表を使えば、高齢者自身がオーラルフレイルを意識するだけでなく、その家族や周囲の人間も注意するようになるはずです。また、オーラルフレイルの予防・対策については、医師と歯科医師の連携はもちろん、介護士や栄養士など高齢者に関わるすべての人々が一丸となって取り組むべき課題といえます。老化は誰にでも訪れるもの。少しでも長く健康で生き生きとした老後を送るために、全国民が日常的にオーラルフレイルを意識するようになってほしいですね。

◯いいじま・かつや
1965年千葉県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、千葉大学医学部附属病院循環器内科に入局。米国スタンフォード大学医学部循環器内科研究員、東京大学加齢医学講座講師などを経て現職。専門は老年医学、総合老年学。

※『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』から