問題は日本酒だ。日本酒はアルコール17度程度が一般的だが、抜栓して翌日には酸化の影響からか、味覚の変化を感じさせる。ワインのように瓶内を真空にするとか、小瓶にうつすのがよいのかもしれない。よくあるやり方のように、日本酒を一升瓶に入れたまま、は問題かもしれない。

■ワインを飲むときの適性温度を知る

 ワインを飲むときの適正温度は赤ワインで12~20度、白ワインで6~14度とされている。スパークリングワインだと6~12度、ロゼは6~10度といわれている。

 つまり、白ワイン、スパークリングワイン、ロゼは低温で飲んだほうがよく、白ワインやスパークリングワインは氷で冷やした状態でサービングされることが多いのはそのためだ。赤ワインの適正温度は高めだが、それでも多くの季節では室温よりも低い。室温でほったらかしにせず、ちゃんとセラーで管理したほうがよいのはそのためだ。ただし、これはあくまで一般的な目安にすぎない。
 
 近年、地球温暖化が進んで真夏日などは本当に猛暑になる。こういうときに適正とされる温度で赤ワインを飲んでもぬるくて、あまりおいしく感じない。むしろこういう猛暑日には、冷蔵庫で冷やしてキンキンにした赤ワインのほうがおいしい(とあるワインショップで教えてもらった)。

 逆に寒い冬ではホットワインがおいしい時もある。フランスも地域によっては冬はすごく寒く、ホットワインがとてもおいしい。日本でもホットワインを出すお店はある。

 要はおいしく飲めれば、それでいいのだ。最近は、いろいろな温度やブラインドでワイン・テイスティングをして、個々のワインの適正サービング温を検証する企画がワイン雑誌でされたりしている。ワインもエビデンス(科学的根拠)に基づく時代になったのだ。

 ワインの温度が上がると甘みが強く感じられ、渋みや苦みは弱く感じられる。渋めのワインをあまり冷やしてしまうと、渋みが強すぎておいしくないかもしれない。あと、酸味は温度とあまり関係ないようだ。

 日本酒は冷から熱燗まで温度のバリエーションが大きいのが特徴だが、ワインは(ホットワインなど例外はあるけれども)日本酒ほど温度設定に自由度はない。あるワインの適正サービング温度はいろいろ議論されるが、温めても冷やしてもおいしいワインというのはほとんど存在しないんじゃないか、とぼくは思う。

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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