そんなわけで、近年人気のスクリューキャップでは瓶を横に寝かせる科学的根拠はない。そのスクリューキャップで味が低下するかは長い検証がなされてきたが、結論からいうとスクリューキャップでワインの質は低下しない。ニュージーランドではほとんどのワインがスクリューキャップで、高級ワインでもそうだ。

 なんとなくワインはコルクが常識で、そうでないスクリューキャップはチープな印象をもたれた時期もあった。現在はまったくそういうことはない。ワインオープナーなしで開栓できるのでスクリューキャップは便利だ。まあ、あの「儀式」がないと嫌だ、という方もいるかもしれないが。
 
 さて、ワインを劣化させることなく保存するにはどうしたらよいのか。

 温度や湿度、光の問題を解決するには、ワインセラーに入れるのが一番だ。しかし、開栓後のワインでは、たとえセラーに入れていても、じきに劣化してしまう。それは、酸素のせいだ。

 ワインを劣化させる最大の要因は酸素だ。開栓後は瓶内の酸素がワインを劣化させてしまう。なので、多くの専門家は飲み残しのワインを小さな瓶に移し替えて保存することを勧めている。ぼくは飲み残しのワインについては、吸引式のポンプを使って瓶内を真空にしている。窒素を注入するデバイスも最近は売られている。

 ただ、醸造学者のエミール・ペイノーは、ワインは抜栓して3時間までは物理的な変化はないと述べている。本当かどうか、検証したことはまだない。
 
 逆に、空気にさらして、味をまろやかにしたいときは、カラフェやデカンターに移して空気への接触面を増やさないといけない。パニエに入れて横にしても接触面は増える。ブランデーやウイスキーのようにアルコール濃度が高い蒸留酒は空気に触れてもすぐには変性しない。

 したがって封を空けてしばらく空気に触れていても味はそんなに落ちない。焼酎や酒精強化ワイン(シェリーやポート)のアルコール濃度は25度程度とやや低めだが、それでも風味は落ちにくい。

次のページ
酸味と温度はあまり関係がない