岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。専門は感染症など。
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。専門は感染症など。
デカンターに移し替える、デカンタージュを行うのもワインと酸素を触れさせるのが目的だ(写真:getty images)
デカンターに移し替える、デカンタージュを行うのもワインと酸素を触れさせるのが目的だ(写真:getty images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。

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 ワインの品質を下げるのは酸素。酸化が劣化の原因だ。ただし、酸素を含むことで味がまろやかにおいしくなることもある。ワイン別の「瓶」、デカンターに移し替える、デカンタージュを行うのもワインと酸素を触れさせるのが目的だから。また、ワインは低めの温度で保存する。温度が高くなると瓶内の化学反応が促進されてしまうからだ。

■ワインの保管は温度と光に注意

「刑事コロンボ」という少し昔のアメリカの刑事ドラマ、そのなかに「別れのワイン」という傑作がある。ここから先はネタバレになってしまうので、未見の方は読み飛ばしていただきたい。この作品ではワインの大好きな殺人犯が、アリバイ作りのために犯行現場から離れていく。その間に死体を入れていたワインセラーは(いろいろなネタバレな事情で)温度がすごく上がり、ワインが劣化してしまう。この劣化が事件解決のポイントとして取り上げられている。温度上昇がワインを劣化させる好例だ。
 
 また、ワインは光とも反応する。なので暗いところで保管するのがよい。よって、ワインセラーは低温、かつ暗い環境を維持するものである。ちなみに、ワインセラーでワインを横に寝かせて保存するのはコルクを湿らせるためだ。コルクが乾燥しすぎると壊れて抜栓しにくくなるし、空気が瓶に入ってワイン劣化の原因となるからだ。

 もっとも、たいていのワインの場合、コルクの上にカバーがついているから、あまり問題にはならないかもしれない。だから、お店によってはワインの瓶を縦に立てているところも多い(このほうがエチケットを見やすいし)。
 

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岩田健太郎

岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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