レスは、ショーンのギターの手腕に着目。お互い音楽の趣味や嗜好が似ていたことからプロジェクトの話を持ちかけ、プライマスのファンだったショーンがそれに応じて制作、発表されたのが『MONOLITH OF PHOBOS』(16年)。2人の趣味、嗜好を反映し、レスの個性的で強靭なベース、ショーンのギター、ドラムスに加えてメロトロンが随所で鳴り響く。60年代後期のサイケ、70年代初期のプログレを現代化したサウンドとなり、話題となった。

 ツアー中、レパートリー不足から演じたカヴァー曲を収録したEP『Lime And Limpid Green』を出した後、2作目のフル・アルバムとして発表したのが、今回の『サウス・オブ・リアリティ』だ。

 制作、作曲はレスとショーンの2人。ドラムスのパウロ・バルディ(元ケイク)が参加した3曲以外は、2人の演奏による。ショーンが語るには、テクノロジーや科学が進歩する一方で、奇妙でダークな超現実的な出来事が起きている今の世の中を反映した作品だという。

 アルバムの幕開けは「リトル・フィッシズ」。SEをバックにしたモノローグ的なイントロで始まる。オリエンタルなメロディーで、レスのチョップ・ベース、ショーンのステディなドラムや12弦ギターがストレートなロックに変化する。汚染された海で取れた毒まみれの魚が人間の脳をむしばむという歌詞だ。

 先行シングルとして発表された2曲目の「ブラッド・アンド・ロケッツ」は、メロトロンの響きが懐かしいプログレ風。ザ・ビートルズの名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のサウンドをほうふつさせる。ショーンの歌いぶりもジョンにそっくりだ。ショーンが、錬金術の実験中に爆発事故で死亡したロケット科学者の伝記を読んで書いたという。

 レスがヴォーカルをとるリズミックな表題曲の「サウス・オブ・リアリティ」は、日食観察がテーマ。ショーンのシンセ・ソロが絶妙だ。

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かつては、歌声や作風が父ジョンに似ていると指摘され…