【文豪の湯宿】「文学の鬼」が芥川龍之介と三角関係になった温泉宿 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

【文豪の湯宿】「文学の鬼」が芥川龍之介と三角関係になった温泉宿

このエントリーをはてなブックマークに追加
鈴木裕也週刊朝日#旅行

聴泉閣 かめや/格式の高い老舗の「かめや」はかつて島崎藤村の定宿でもあった

聴泉閣 かめや/格式の高い老舗の「かめや」はかつて島崎藤村の定宿でもあった

"芸者・鮎子と会うためだけに、幾度も「かめや」を訪れたわけではない。「苦の世界」「人心」など宇野作品の名作の多くを執筆した
聴泉閣 かめや/長野県下諏訪町横町木ノ下3492"

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「宇野浩二」の「聴泉閣 かめや」(長野県・下諏訪温泉)だ。

【「聴泉閣 かめや」の客室の写真はこちら】

*  *  *
「文学の鬼」と称された宇野浩二は、生涯に数多くの女性たちと愛憎関係に陥り、それを題材に小説を描き続けた。なかでも執筆のために訪れた下諏訪温泉・かめやで出会った地元芸者・鮎子は特別な存在だった。

 出会った大正8年9月に恋に落ち、12月には2カ月滞在。ほぼ1日おきに鮎子を呼んだ。その後の1年半で5回、訪れたほどの執心ぶりだった。

<浩二は、下諏訪に来ると、かならず「かめや」に泊まり、山の見える二階の六畳に机を置いて仕事をしたが、昼でも鮎子を呼び、お茶をたてさせたり、香を燻らしてもらったりした>(水上勉『宇野浩二伝』)

 だがこの恋は実らなかった。かめやで出会った別の芸者・小竹に押し切られる形で大正9年5月に結婚。鮎子への恋心が収まらぬ宇野は、妻に内緒でかめやを訪れている。大正9年11月には関西での講演の帰りに芥川龍之介を伴い下諏訪へ寄り、鮎子と3人で映画を見る。芥川は帰京後、鮎子に「宇野には内緒ですが、惚れてしまいました」という内容の手紙を送っている。

 鮎子が後年まで大事に保管したのは芥川からの恋文だった。

(文/本誌・鈴木裕也)

■聴泉閣 かめや(ちょうせんかく かめや)
長野県下諏訪町横町木ノ下3492

週刊朝日  2019年3月15日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい