速球に関しては、メジャーの先発投手の100球前後の球数なら、150キロ台をコンスタントに出せる。これはコーチ陣とも話しているだろうが、メジャーはフライボール革命もあって、低めの速球系にはめっぽう強い。アッパー気味のスイング軌道に対しては高めの球は有効になる。高めに行くことを恐れず、思い切り腕を振ってもらいたい。

 今年は3月20、21日に東京ドームで開幕戦を迎えるマリナーズ。イチローがプレーするとなれば、日本のファンにとって宝物となるだろう。45歳になってもなお、動き自体には衰えはみられない。打撃フォームを変更しており、飛距離アップを実感しているとのニュースも目にした。

 開幕戦だけでなく、その後も現役の選手として生き残るという強い意思を感じる。レギュラーであれば、安打を重ねて打率を残すこともできるが、イチローに求められるのは、試合終盤の守備固めであり、1打席での結果だろう。そこで長打も出るところを見せられなければ代打起用も難しくなる。米国の野球殿堂入り確実と言われる選手が、今もなお変化を重ねる。ただその変化も打撃で絶対に変わらない軸があってこそ。同じ変化でも、プロ入り以来、投球フォームに試行錯誤が続く菊池とは少し違う。

週刊朝日  2019年3月15日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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