たった1ミリが相手に与える印象を大きく変える。大慈弥医師は言う。

「まぶたに関して、人は1ミリという差でもちゃんと認識できる。指の長さが1ミリ違ってもわからないものですが、まぶたというものはそれぐらいミリ単位の変化も相手に気付かせます。『この人、若くて目がぱっちりしているな』とか、『目がトロンとしているな』と、まぶたの下がり具合で判断する。いわゆる目ヂカラには、まぶたが関係しているということなのです」

 まぶたが瞳孔の上縁にかかると中等度下垂、中央よりも下垂すれば強度下垂となる。ここまでくると黒目は半分も見えない。

 これは加齢とともに、誰にでも起きるのだという。

「日本人は程度の差はあれ50歳を過ぎるとほぼ100%の人が眼瞼下垂になります。一重まぶた、奥二重の人、ハードコンタクトレンズを長期装着している人は、眼瞼下垂になりやすい。まぶたをこする回数が多い人もそうです」

 広い意味での眼瞼下垂には、まぶたの皮膚がたるむ「上眼瞼皮膚弛緩症」と、すじがたるむ「腱膜性眼瞼下垂症」の二つある。治療は、おおざっぱにいえば、前者では、眉下のたるんだ皮膚を切除、後者では挙筋腱膜という膜を前に引きずり出すという手術をするが、後者の場合、筋肉の機能があることが条件だ。生まれつき、まぶたを開ける機能が弱い「先天性眼瞼下垂」の人もいる。単なる下垂だけかと思いきや、眼瞼痙攣というまぶたがけいれんする病気が潜んでいることもある。いずれにせよ、上方の視野が狭く感じるなどの自覚症状がある場合は、医師に診てもらうのがよい。眼瞼下垂と診断されれば、治療に保険が適用される。

 北里研究所病院の形成・美容外科部長を経て、現在は自由が丘クリニック(東京)で院長を務める佐藤英明医師は、これまでに眼瞼下垂の手術を千件以上も手がけてきた。

「昨年は90代の女性が手術を受け、『見やすくなりました』と喜んでお帰りになりました。受ける方は20代から90代と幅広いです」(佐藤医師)

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