強い薬は眠くなるというイメージが強いが、最近の薬はそうでもない。日本医科大学耳鼻咽喉科学講座主任教授の大久保公裕医師は「眠くなる薬は少なくなっており、数%ぐらい」と話している。一般的に飲み薬が多く使われ、「抗ヒスタミン薬がよく効いて出しやすい」という。抗ヒスタミン薬は「アレグラ」など、眠気といった副作用が軽減された第2世代のものが主流になっている。

 一方で、患者は子どもから高齢者まで年齢も幅広く、どんな症状がどれくらいの強さで出るかもさまざま。適切な薬は人によって違う。「万能薬はない」と大久保教授は話している。

 また、薬に頼るだけでは対策が不十分な人もいる。例えば、学生時代に発症した30代の男性は、抗ヒスタミン薬を服用し、点眼薬や点鼻薬も併用。さらに最新式のマスクを着用するが、この時期は目のかゆみや鼻水に悩まされる。

「もっと強い薬を処方してもらうことも考えましたが、眠気があると仕事に差し支えるので。薬だけでは日常生活もつらいですね」

 薬物療法はあくまで対症療法。限界もあるということだろう。

 こうした昨今の花粉症事情も重なって注目が集まる冒頭のじゃばらだが、現在のような特産品になるまで紆余曲折があった。変わった味がするので地元住民には見向きもされず、昭和の後半に村で残っていたのは1本だけ。原木の持ち主は味や香りが他のかんきつ類より優れており、村の特産品にしようと呼びかけ、専門家に調査を依頼したところ、国内外で類のない新しい品種とのお墨付きを得た。原木から接ぎ木し増やして、村の名物として売ろうとしたが売れず、事業は赤字続きだった。

 しかし、そんな中でも毎年、じゃばらの実をたくさん購入する人がいた。不思議に思った村の職員が理由を尋ねると、「花粉症に効くんです」と意外な答えが返ってきたという。これがきっかけで花粉症モニター調査を実施。メディアも取り上げ、ヒット商品となった。じゃばらの木は現在8千本ぐらいに増えている。

 さて、医学的にみて、かんきつ系果実などを使った花粉症対策はどうなのか。日本医科大学の大久保教授はこう話している。

「薬の効果の半分とか3分の1ではないか。薬として効くなら、すでに薬になっているだろう。効いたとしても症状を抑える効果で、治るわけではない。本人が満足するのなら……」

 特効薬の開発が待ち遠しい。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年3月15日号