「今の読者には結末のはっきりした話が受けるでしょうけど、僕はどっちにもとれるような、想像して結論を出すみたいな話が好き。読んだ人によって読み味が違ってくるのが面白い」
だから百まで書かずに九十で寸止めして、あとは読む人に想像してもらう。堂場さん自身、そういう読書が好きなのだという。
執筆は1日5時間ほど。仕事場に出勤し、午前中2時間、ジムでのトレーニングと昼食をはさんで午後2時間、帰宅して夜に1時間というペースを続けている。「ピアニストと一緒で、書かないと戻っちゃう感覚がある」ので週末も休まない。
いつも最初に筋書きを決めてから書き始める。
「こういう人を書きたい、この街を書きたい、ということから始まるときもある。頭の中でずっと引っかかっていて、何年も転がして、ようやくストーリーの流れが見えてくることもある。きっかけはいろいろです」
発想のための触媒は日々のニュースだ。新聞を読み、仕事場のテレビで毎時のニュースを見る。
「50歳を過ぎて、働き方のしめくくりが気になってきました。この小説は自分の人生がわかっている50代以上の人のほうが共感できるかもしれません。人生100年の時代ですから、まだまだ何が起きるかわからない。あきらめないことだと思います」
(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2019年3月8日号