堂場瞬一(どうば・しゅんいち)/1963年、茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。著書に「警視庁犯罪被害者支援課」「ラストライン」の各シリーズ、『白いジオラマ』など (撮影/写真部・大野洋介)
堂場瞬一(どうば・しゅんいち)/1963年、茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。著書に「警視庁犯罪被害者支援課」「ラストライン」の各シリーズ、『白いジオラマ』など (撮影/写真部・大野洋介)

 自分の人生のピークはいつだったのか、まだこれからなのか。堂場瞬一さんの新作『ピーク』(朝日新聞出版、1600円※税抜き)は、そんなことを考えさせられる長編小説だ。

「若いときに、ある出来事でピークを迎えてしまった2人の人間のその後を、対照的に書けないかと思ったんです」

 新聞記者の永尾は、入社1年目にプロ野球賭博の特ダネをつかみ、新聞協会賞を受ける。彼の記事によってルーキーの竹藤選手が球界から追放された。

 しかし、以降の永尾に目立った活躍はなく、「一発屋」を自認する日々を送る。

 そして17年後、竹藤が殺人容疑で捕まった。永尾は過去の自分の特ダネに複雑な思いを抱く。

「駆け出しの自分がものすごい才能のある選手をつぶしてしまった。あれはよかったのか、という気持ちになるわけです」

 再び竹藤の周辺の取材を始めると、点と点がつながり、野球にからむ意外な事実が見えてくる。

 ピークの後の人生は、スポーツものを数多く手がけてきた堂場さんが以前から温めてきたテーマだった。スポーツ小説では、選手が最も輝いている若い時代が描かれる。

「でも、輝いた後もみんな生きていかないといけない。若いうちにピークが来ちゃったら大変だろうなということが、ずっと頭にありました」

 竹藤は大型新人だったために転職に苦労し、職を転々とした。年金をちゃんと払っているのか、老後は大丈夫なのか、執筆中、ずっと心配していたという。

 堂場さんは「小説は読んでもらって完成品になる」と考えている。

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