問題なのは、この融資の条件が一般企業の案件より借り手に有利だったこと。銀行は通常、融資額に見合う土地や建物などの担保を求める。焦げ付いて銀行が損をしないように、保全するためだ。

 だが、入手した複数の大手行の内部文書には、融資の保全については、「自民党本部建物の担保差し入れ念書」と「幹事長、経理局長の保証」と記載していた。担保差し入れ念書とあるように、あくまで「念書」で、実際に東京・永田町にある党本部に抵当権が設定されることはなかった。

 そもそも党本部がある土地(約3300平方メートル)は国有地で、賃貸しているものだ。その上に立つ66年にできた建物の資産価値は、収支報告書によると15億5千万円。一般企業が借地の上にある古い建物を担保に、資産価値の何倍もの融資を受けることは通常あり得ない。住宅ローンを利用する私たちの感覚からしても、おかしいことはすぐわかる。

 幹事長や経理局長の個人保証についても、融資が焦げ付いたときに肩代わりしてくれる資産の裏付けはない。ある大手銀行関係者は、事実上の無担保融資だったことを認め、こう明かす。

「念書と個人保証をつけたのは、まあ、何もないより良いでしょうということです」

 また、内部文書によると、融資は1年更新の手形貸し付けの形をとっており、更新期日に自民党本部と「条件交渉」をしていた。銀行側の交渉窓口は全国銀行協会の会長行(1年交代)に一本化され、他行は会長行と同じ条件で融資を継続することになっていた。一般企業では細かな返済計画を事前につくり、それに沿って返済する。返済期限がはっきりせず、24年間も借り入れを続けられたのは、銀行団が自民党を特別扱いしていたことを示す。

 内部文書によると、金利は近年は1.95%だった。条件交渉では金融市場の動向なども踏まえ、金利が引き下げられたこともあった。

 驚くべきは、自民党はこの100億円以外にも、巨額の融資を繰り返し受けていたことだ。内部文書には、別のつなぎ融資についてこう書かれている。

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