「急性の閉塞隅角緑内障は、突然強い眼の痛みや頭痛、吐き気や嘔吐などに見舞われ、適切な処置をしないと数日のうちに視野障害や失明に至る恐れがあります。一方で、慢性的にゆっくり進むタイプでは、10~20ミリメートルHgの正常眼圧に対して、眼圧が20台後半から30台になっても気づかず、たまたまほかの眼の病気のために受けた検査などで見つかることになります」(中野医師)

 また、富田医師によると、次のような症例もある。

「閉塞隅角であって眼圧も高いのに、視神経などの異常は見られない場合があり、閉塞隅角症と診断します。視神経に異常がないので緑内障とはいえないものの、高頻度で緑内障に移行することが明らかであり、治療の対象となります」

 中野医師は、開放隅角か、閉塞隅角かは定期的なチェックが必要だとみている。

「隅角は加齢とともに狭くなると考えられているからです。緑内障と診断されたら、常に“現在の隅角”がどうなっているのかを知っておくべきです」

 開放隅角でも閉塞隅角でも、緑内障治療の基本は「眼圧を下げること」である。これが緑内障の治療で唯一の科学的根拠のある方法だからである。

■レーザーで虹彩に穴 圧力格差を小さく

 眼圧を下げるために、まず実施されるのは、開放隅角緑内障なら薬物療法である。しかし、使われるのは、房水の排出を促したり、産生を抑制したりする薬剤(点眼薬)である。

 これに対して、房水の排出口である隅角が塞がっている閉塞隅角緑内障では、薬で眼圧を下げることは難しい。では、閉塞隅角緑内障にはどう対処するのか。富田医師が言う。

「閉塞隅角症も含め、まず閉塞している隅角の状態を改善する、すなわち少しでも閉塞状態を解除する治療をおこないます。レーザー治療はその一つです」

 瞳の周りにある円盤状の膜である虹彩(茶目)にレーザーで小さな穴を開けることで、虹彩の前と後ろ(眼の内部)の圧力格差を小さくする。その結果、隅角が開きやすくなる。

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白内障手術は高齢者に増加傾向